郡山藩の郷鑑はその存在は随分前から知られており、郡山市史にも一部掲載されているが、その史料を書籍化することは、近世の穢多・非人・夙・神子・隠亡などのことも記載されているので、史学者達も自ら手を挙げることはされなかったようである。
これを出版されたのは、奈良県同和問題関係史料センターの皆様で、平成20年(西暦2000年)の発行である。
刊行にあたって・・・として序に所長の辰巳雅宥氏が書いておられるが、この史料は立教大学名誉教授林英夫先生が個人として所有されていたものであった。
郡山藩の解体により流出したものを何処かの古書店などを経由してお手元に辿り着いたのであろう。よく保存して頂いたと感謝の念に堪えない。
また、この史料を出版するという決断をされた所員の皆様方に心より敬意を表す次第である。
この史料が現存したことによって、近世奈良県下の村々の状況もわかるのである。これが破棄されていたら、近世奈良県の庶民の状況は一部の近世史料を伝承された村以外は、殆ど判らなかったと言っても良いだろう。
先日丹波の真宗会所について書いたが、その時にもこの史料が役立っている。
なぜ、この史料を私が持っているかというと、初めて史料センターへお邪魔した時にこの史料の存在を知り、残部があればお分け頂きたいとお願いしたのであるが、全く残っていなかった。そこで、インターネットで売りに出ていないかと思い検索した処、神田の古書店から出品されていたので、迷わず購入したのである。
後日センターへお邪魔した時に、所長さんに入手できたとお話しした処、大変驚かれていた。
抑々この本は同和関係の団体に無償で配布されていたものであり、その団体が貴重な史料として永代保管されるとの認識でおられた。当然そうであろう。
私が入手したのは平成19年か20年だった。ネット上では3冊売りに出ていた。
この本は奈良県の県民の税金で作られている。出版費用だけでなく、同和問題の史料を探し、解読、研究して書籍化された所員の皆様方の努力は大変なものである。
センターの所員は県職員であるので、その人件費を考えたらこの本は大変高価なものである。それをいとも簡単に古書店に売り払っていたとは、その同和団体は一体誰なのだ。
このような本は一般人が買う訳ではないので、古書店は二束三文で買い上げている筈である。
では、その売却代金はどうしたのだ。恐らく幹部の飲み食いに使ってしまったのだろう。
同和団体の皆様にお願いしたい。このような馬鹿げた行為は二度としないで頂きたい。
センターの皆さんが長い年月をかけて史料を収集し、漸く出版に漕ぎつけられた書籍を大事に扱って頂きたい。邪魔になると思うのなら、贈呈を遠慮されるべきであろう。
他に多くの史料を出版されているが、私は入手することが出来ない。幸いにもPDFファイルにして公開されているので、殆どの史料はプリントアウトして持っているが、書籍で持つのとは違い、A4サイズの紙は扱いにくい。不要なら是非私に送って下さい。有り難く後世に伝えます。ご連絡はフォームメールからお願いします。