鳥越俊太郎氏家系とNHK

家系の遡及

何年か前からNHKでフォミリーヒストリーという番組が放送されている。
私は個人のルーツを探るこの番組にかなり批判的であった。

というのは、家の歴史というものは長い経緯の中には一族で相反することもあり、本系に対して逆意を抱いた者もいた筈で、それは今日まで本系として遠祖の祭祀を継承してきたものからは、もう同族とは看做さない決定をした事も多々あることである。

今日でも親の死によって相続が発生したおりに、現在の民法に基づき均等に分配すれば、両親の老後を看取った者(多くは長男であろう)と、若くして家を出て自由に暮らしてきた者とでは、立場は全くことなるのである。
しかし、現民法の規定で訴訟になれば、殆どの場合親の老後を介護した者と、他の者と同率分配をしなければならなくなる。

そのように一族でシコリを残した者は、親の命日にも墓参はしないし、本家に対して今後発生するであろう供養の費用を負担することもしなくなる。

そのような状態が何代も後になって、遠祖の歴史を継承している等と他所で吹聴して貰っては、本家にとっては甚々迷惑千万である。

さて、今日ネットでジャーナリストの鳥越俊太郎氏の遠祖を探った時に在地を取材され、戦国期武将大友宗麟の有力家臣の子孫だったと放送されたことについて、本系の当主から、近隣に住まいしておられ、同じ姓を名乗っておられるが、一族とは全く関係がないとNHKに抗議があったという記事が掲載された。

2016年5月22日
yahooのトップにも掲載されたが、AsageiPlusに掲載された記事を引用しおておく。
http://www.asagei.com/excerpt/58626

5月19日に発売された「週刊新潮」がジャーナリストの鳥越俊太郎氏を糾弾した。

記事によると、昨年7月、NHKの人気番組「ファミリーヒストリー」に出演した際、自身のルーツを示すものとして紹介された家系図が全くのデタラメだったというのだ。

同番組では、鳥越氏の親戚が提供した家系図に基づき「大友宗麟の家臣だった鳥越興膳」が鳥越氏の祖先であると紹介。

「関ヶ原で敗れた側」のルーツを持つと番組序盤に知らされた鳥越氏は、反権力を是とする自身と重ね合わせ「昔から権力側にはつかなかったんだな」と納得した様子だった。

しかし、番組放送後に「鳥越興膳の本物の子孫」という人物がNHKに抗議。同局は再放送を中止し、鳥越氏の家系図がデタラメだったことを認める格好となった。

その後、番組で紹介された家系図について「全く関与していない」と他人事のように振舞っているという鳥越氏だが、同業者であるジャーナリストからは「廃業モノの大失態だ」と手厳しい声が上がっている。

「鳥越さんといえば、つい先日も自民党の高市早苗議員の『経歴詐称』を指摘して、厳しく追及していたばかり。他人に厳しく自分に優しいと思われても仕方ない。いくらスタッフが調査する番組といっても、とことんまで調べるのが仕事のジャーナリストが『知らなかった』では許されない。しかも彼はデタラメが発覚した後も『自分は鳥越興膳の子孫』と吹聴していたと報じられています。こうなると、今後は何を主張しても説得力に欠けることは間違いありません」(鳥越氏を知るジャーナリスト)

人気番組をきっかけに、信用はガタ落ち。反権力のジャーナリストも「血筋自慢」の誘惑には勝てなかったようだ。

(白川健一)

明治初期に姓を付けるとき、地域の有力者の姓を名乗ったケースが多々ある。
拙家の在地に残った家系は明徳年間の地頭譲り状を伝承し、在地領主の子孫として歴史書にも現れ、鎌倉期の吾妻鑑、南北朝期の太平記、明徳期などにもあらわれ、江戸期に在地へ入部した領主が在地の歴史史料・伝承等を調査し、書物として刊行していたので、世間的に譲り状の内容も知られていた。
そんな経緯があったからであろうか、江戸中期以降に別姓であるが、拙家の分かれであるという系図が隣の郡で作られ、それが密かに伝搬していたようで、今日でもそれを基にして歴史雑誌に論文を投稿する人まで出てくる。

その論文を書いた方は以前私を訪ねてこられたので、そんな偽系図をもとにして云々と書かないで頂きたいとお願いしておいたのであるが、何年か後になって偶然私がその雑誌を読むこととなり、誠に驚くと共に、偽系図を基にして現在の人物に繋げてゆく手段に呆れかえったのであった。

これらの人は在地に残る老齢の一族を言葉巧みにだまして史料のコピーを取ってゆかれ、勝手な論文を投稿し、それを知らせることもされない。

今回のNHKのやり方も似たようなことであろう。まさか本物の当主が現存するとも思わず、どこかで偽系図を見せてもらい、それを基に番組を作られたのであろう。

鳥越氏といえばジャーナリストとして著名な方であるのに、どうしてこんなインチキ臭い番組に出演されたのであろうか。ご自分で足を運べば本系とは何の関係もない家の出身であることは直ぐに解った筈である。大失態としか言いようがない。

家系を探ろうとされる方は多くおられる。私もその一人であるが、家系と遠祖の供養とは一体のものであり、例え一族であったとしても、本系との縁を切って勝手気ままに過ごしてきた者の子孫は、縁を切った時点からその家の家系が始まるのである。過去と切り離したのは貴方の親、祖父、曾祖父などであり、遠祖の祭祀を共有すること、則ち、本家が負担している遠祖の供養に懸かる費用を幾分か分担する義務を放棄した時点で、もう完全に縁が切れたのである。今になって遠い遠祖の歴史が云々というのは迷惑千万以外の何物でもない。義務を果たさずに権利だけ継承はできない。

遠い遠祖の歴史を共有したいのであれば、まず本系の当主の基に赴き、長年の無沙汰を詫びることが最初であろう。

今回の鳥越氏に関しては、全く関係ない家であるとのことなので、まあ、よくもここまでいい加減な偽家系番組を放送した物だと呆れてしまう。

鳥越氏はご自身はこの番組の作成に携わっていないと仰っているようだが、編纂が終わってから放送までに時間はあった筈である。何故ご自分で検証に向かわれ無かったのだろうか。

ジャーナリストとしての矜持はどこへ行ったのだろう。

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